2023.6.2

JRおおいたシティ開業8年 その成功の舞台裏に迫る【#02 JRおおいたシティ 常務取締役 北島剛明 】

駅とまちが一体となって人の流れをつくる

インタビュー
#商業施設#まちづくり#イベント#飲食店向け

大分県大分市は、全国でも有数の源泉総数・湧出量を誇る温泉都市。海・山・川に囲まれ地形や気候にも恵まれた自然ゆたかな場所です。大分市の人口は約48万人、九州圏内の都市としては5番目の規模を誇り、JR大分駅は1日にのべ約2万7000人が利用します。

10年ほど前は郊外のショッピングモールに人が流れ、活気があるとはいえない状況だった大分駅周辺。それが、いまや大分市1番の賑わいをみせる場所となりました。駅ビル開業にあたって、具体的にどのようなことに取り組み、再び街なかの賑わいを取り戻すことに成功したのでしょうか。

今回は、大型商業施設「アミュプラザおおいた」の管理・運営を行う株式会社JR大分シティ 常務取締役 北島剛明さんにお話を伺います。

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駅ビル全体がJR大分シティとなっており、アミュプラザおおいたに加え、その他温浴施設、屋上庭園、ホテル、駐車場を備える。総合デザインは電車のデザインで有名な水戸岡鋭二氏。

ーアミュプラザおおいたは2015年4月にオープン、今年で創業8年目を迎えられました。まずはこれまでの売上推移、コロナ禍における影響などについて教えてください。

北島剛明さん:2015年4月の創業以来、テナント売上高は初年度から220億円を超え、おかげさまでほぼ右肩上がりに推移してきました。2018年度には241億円と過去最高売上を達成。しかし、2019年度末あたりから本格的にコロナ禍に突入し、2020年度は188億円とかなり厳しい時期を過ごしました。2021年度以降は次第にお客様も戻り、2022年度は開業当時ぐらいまでの売上に回復してきました。

大きく数字を落としたもののコロナ禍の売り上げへの影響は、九州圏内の他のアミュプラザと比べ、軽微な方でした。その理由は、当商業施設が地域密着型の商業施設であったことが大きいと考えています。元々来店される方の約8割が地元のお客様だったこともあり、コロナ禍の影響をあまり受けることがなかった。今後は、再び増加傾向にあるインバウンドを含め、より多くの方に来店いただけるよう施策を考えているところです。

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JRおおいたシティ 年度別売上・入館者推移

ーJR大分駅は新幹線の停車駅でないにもかかわらず、JR九州駅ビルグループの中でも売上4位に入るほど賑わいをみせています。開業プロジェクトを進めるなかで困難だったことや、開業後の変化はありましたか?

2000年頃に郊外型のショッピングモールが2つできたんです。それにより、立て続けに中心部の商業施設の閉店が決まるなど街全体が活気を失っていた。今のように駅の周りにマンションもなく、非常に閑散としていました。

そんななか、駅前にアミュプラザ開業の話が持ち上がり周辺の商店街の方々に話をしたところ、初めは「黒船がきた」など不安や抵抗感を示される方も多かった。そこで私たちは街の方々と一体となってプロジェクトを進める必要性を強く感じ、「アミュプラザと商店街が一緒になって、まちづくりをしよう」という方向性を掲げました。なかでも’’店舗のリーシングも含め、街のみなさんと一緒にやっていく’’という姿勢を体現すべく、開業に向け、商店街の方々と話し合いながら、お互いに共存可能なMDを計画。時間をかけて対話と理解を得ながら進めてきた結果、おかげさまで今では多くの地元の方にご利用いただける駅ビルとなりました。

ーアミュプラザ開業後は、駅周辺にマンションや住宅も増えてきましたよね?

そうですね、多くのマンションや住宅が建つようになって、駅周辺の居住人口も増えてきました。さらに県内外からの来訪者も増えて、結果的には商店街にも人が増えました。開業当初から掲げていた「駅と街と一緒になってまちづくりをする」ということを体現し続けたことが、アミュプラザだけではなく、地域も潤うようになんたんじゃないか、と感じています。

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株式会社JR大分シティ 常務取締役 北島剛明さん

ーそれから私自身、初めてJR大分駅改札口からアミュプラザのエントランスまで歩いたときに、距離がとても近く、驚きました! 駅からの動線など施設の設計において、何か留意したことはありますか?

博多駅や鹿児島中央駅と違い、大分駅には改札出口が一つしかありません。人の流れを確保しやすい強みを生かし、お客様がスムーズに入店頂けるよう改札からエントランスまでの距離をなるべく短くしました。また、入口の数を多くしたこと、駅のすぐ目の前にバス・タクシーの停留所を設けたこと、約2,000台駐車可能の駐車場を駅ビル周辺に設置したことも多くのお客様にご利用いただけている理由だと考えています。

ー現状は、お客様の中心が地元の方ということですが、店舗のリーシングにおいて、これからの展望を教えてください。

開業当時は220店舗のうち100店舗近くが大分初出店ということもあり、話題性はかなりあったと思います。その後、時代の流れに合わせて順次店舗の入れ替えもあり、高齢者の方もふくめた幅広い層のお客様に楽しんでいただけるよう、今後は、よりお客さまのニーズにあった業種・業態の店舗を充実していきたいと考えています。これからは観光の方も増えるでしょうし、特に地元の飲食店やお土産店にもっと参入してもらえたら嬉しいです。また、インバウンドの観光ツアーが別府へ立ち寄るついでに、アミュプラザで食事やショッピングを楽しんでいただくプランも旅行会社と計画しております。場所によっては、食事をするにも大勢で入れる場所がなかなかないので、需要は大いにあるかと思います。

ー開業当時から、「駅と街と一緒になってまちづくりをする」という姿勢を大切にこれまでやってこられたとのことですが、現在も何か地域の方々と一緒に取り組まれていることはありますか?また、今後の展望についてもお聞きしたいです。

現在も、銀行やテレビ局など地元の企業・団体のみなさんの協力のもと、様々なイベントを定期的に行っています。

最近ですと、周年企画としてアートにまつわるイベントを行いました。これは「りぼんプロジェクト」(アートや音楽などを通じておおいたの無限の可能性をりぼん(Re Born)で結び、つなぐプロジェクト)の一環で、駅前広場で市民のみなさんが制作するアート作品展示やライブペインティングを披露するもの。参加者は、障がい者の方、学生、アーティストとさまざまです。それぞれがもっている才能を発表する場を設けることをテーマに企画をしました。

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イベントを定期的に開催し、地域に開かれた施設を目指す。

他にも、今年の5月には「おおいた駅前伝統フェス」と題して、大分県内にある祭りの神楽や、太鼓などを披露する催しを実施しました。地方からも多く人が集まり大変にぎわっていたので、こういう大分らしさや、街の人たちとの一体感を体現できる独自性のあるイベントを今後もやっていきたいです。開業8年目を迎えた2023年は、”おおいたルネサンス”という言葉のもと、「新しい日常における楽しむ場をつくり、地域とともに一体となって国内外に発信する」ことに全社で取り組んでいきたいと考えています。

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屋上庭園「シティ屋上ひろば」 2022年は年間46回イベントを開催し、入園者数は30万人を超えた。

大分という街を大切におもい、地元の方々と対話を重ねて共に歩みをすすめた8年間。いまや老若男女問わず人が集まり、多くの人に愛される駅ビルとなった裏側には、いくつもの秘訣がありました。コロナ禍を乗り越え、新しい日常を楽しむ仕掛けづくりを企画したり大分の発信地として、前向きに挑戦を続けるJRおおいたシティに今後も目が離せません!

#商業施設#まちづくり#イベント#飲食店向け

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